小規模事業者持続化補助金「災害支援枠」で事業再建を – 令和6年能登半島地震被災事業者向け支援策
1. はじめに – 災害支援枠の概要
令和6年能登半島地震により被災された事業者の皆さま、心よりお見舞い申し上げます。この度の地震で影響を受けた小規模事業者の方々を支援するため、「小規模事業者持続化補助金」に「災害支援枠」が設けられました。この記事では、この支援策の概要と活用方法についてご説明します。
小規模事業者持続化補助金「災害支援枠」は、被災した小規模事業者が行う事業再建に向けた取り組みを支援するものです。通常の持続化補助金とは異なり、被災事業者の早期復旧・復興を目的としています。
主な特徴は以下の通りです:
- 被災地域の小規模事業者が対象
- 事業用資産の復旧や販路開拓等の幅広い取り組みに活用可能
- 補助率や上限額が通常枠より手厚い
- 令和6年1月1日以降の支出まで遡って補助対象となる可能性がある
それでは、具体的に誰がこの補助金を利用できるのか、詳しく見ていきましょう。
2. 補助金の対象となる事業者
2.1 地域要件
この補助金の対象となるのは、以下の4県に所在する事業者です:
- 石川県
- 富山県
- 福井県
- 新潟県
ただし、注意点として、本店所在地ではなく、実際に事業を行っている場所が上記4県内にあることが条件です。例えば、本社は東京にあっても、被災した支店が石川県にある場合は対象となる可能性があります。
2.2 被害の種類と証明方法
対象となる被害は、直接的被害と間接的被害の2種類があります。
- 直接的被害:
- 事業用資産(建物、設備等)が地震により損害を受けた場合
- 証明方法:市町村が発行する「罹災証明書」等の公的書類が必要
- 注意:在庫や棚卸資産の損害は「事業用資産の損壊等」には含まれません
- 間接的被害:
- 売上が大幅に減少した場合
- 条件:令和6年1月から7月の任意の1ヶ月の売上高が、前年同期または令和2年1月28日以前の同期と比較して20%以上減少
- 証明方法:セーフティネット保証4号の認定書や地方自治体が独自に発行した証明書等が必要
2.3 小規模事業者の定義
本補助金の対象となる「小規模事業者」は、以下の基準で定義されます:
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):従業員5人以下
- 製造業その他:従業員20人以下
ただし、医師、学校法人、宗教法人などは対象外となります。また、資本金5億円以上の法人に100%株式を保有されている場合や、直近3年の課税所得の年平均額が15億円を超える場合も対象外となりますので注意が必要です。
3. 補助金の内容
3.1 補助率と上限額
この災害支援枠では、被害の種類によって補助率と上限額が異なります。
- 直接的被害を受けた事業者:
- 補助率:補助対象経費の2/3
- 上限額:200万円
- 間接的被害(売上減少)を受けた事業者:
- 補助率:補助対象経費の2/3
- 上限額:100万円
さらに、特定の条件を満たす事業者は、定額(おそらく補助対象経費の全額)が補助される可能性があります。この条件には、新型コロナウイルスの影響を受けていることや、過去の災害からの復興途上にあることなどが含まれます。詳細は、お近くの商工会または商工会議所にお問い合わせください。
3.2 補助対象となる経費
この補助金で対象となる経費は幅広く、事業再建に必要な様々な費用をカバーしています。主な対象経費は以下の通りです
重要なポイントとして、令和6年1月1日以降に発生した経費についても、遡って補助対象となる可能性があります。ただし、適切な証拠書類が必要です。
また、補助事業の実施期限は令和6年8月30日までとなっています。この日までに事業を完了し、支払いを済ませる必要があります。
機械装置等費
- 事業用の機械や設備の購入費
- 注意:単なる取り替えではなく、事業再建に必要不可欠なものに限ります
広報費 - チラシ、カタログ、ホームページ等の作成・改訂費用
- 注意:単なる会社PR目的ではなく、商品・サービスの宣伝が目的のものに限ります
展示会等出展費 - 展示会や商談会への出展費用(オンライン展示会も含む)
旅費 - 事業再建に必要な出張の交通費・宿泊費
開発費 - 新商品の試作品や包装パッケージの試作開発費用
資料購入費 - 事業再建に必要な図書の購入費(1冊あたり10万円未満に限る)
雑役務費 - 事業再建に必要な業務委託・外注費
借料 - 機器・設備のリース・レンタル料
設備処分費 - 既存設備の廃棄・処分費用(補助対象経費総額の1/2が上限)
委託・外注費
車両購入費 - 事業再建に不可欠な車両の購入費(被災した事業用車両の買い替えに限る)
店舗改装工事費等
4.過去の採択者数と分析結果
1次締切 採択者数 | 256 |
2次締切 採択者数 | 588 |
3次締切 採択者数 | 審査中 |
主な業種
- 小売業 (食品、衣料品、雑貨等)
- 飲食業 (レストラン、居酒屋、カフェ等)
- サービス業 (美容室、整体、自動車整備等)
- 製造業 (食品加工、伝統工芸品等)
- 建設業
- 宿泊業
主な支援内容
- 店舗・設備の修繕・改装
- 機械・設備の購入・更新
- 販路開拓・PR活動
- 新商品・サービスの開発
- Webサイト制作・EC販売強化
- 事業の多角化・新分野進出
特徴的な傾向
- 地域の伝統産業(輪島塗、加賀友禅等)の再建支援が多い
- 観光業関連(宿泊施設、飲食店等)の復興支援が目立つ
- デジタル化・オンライン販売への対応を図る事業者が増加
- 地域資源を活用した新商品開発や体験型サービスの提案が多い
- 事業の多角化や新分野進出により、リスク分散を図る傾向がある
能登半島地震による被害を受けた小規模事業者の迅速な復興と、事業継続・発展を支援する取り組みが行われています。地域の特色ある産業や観光資源を活かしつつ、デジタル化や新規事業展開など、将来を見据えた事業再構築の動きも見られます。この補助金を通じて、被災地域の経済回復と持続可能な発展が期待されます。
5. 申請の流れと注意点
5.1 申請の手順
- 公式サイトから申請様式をダウンロード
- 申請書、経営計画書、補助事業計画書を作成
- 被害状況を証明する公的書類を入手
- 作成した書類を地域の商工会または商工会議所に提出
- 「支援機関確認書」の発行を受ける
- 全ての必要書類を揃えて、締切日までに郵送で提出
- 電子データ(CD-ROMまたはUSBメモリ)も同封が必要
審査を経て採択結果が通知される
採択後、計画に基づいて事業を実施
事業完了後、30日以内に実績報告書を提出
実績報告書の承認後、補助金が支払われる
5.2 審査のポイント
審査では主に以下の点が評価されます
- 事業再建に向けた取り組みとして適切か
- 被害の程度(より大きな被害を受けた事業者が優先される傾向)
- 経営計画の妥当性と有効性
- 経費の積算が適切か
4.3 重要な注意事項
- 申請は事業者自身が行うことが前提です。外部コンサルタント等に丸投げすると、不採択になる可能性があります。
- 虚偽申請や目的外使用は厳しく罰せられます。
- 補助金の支払いは後払いです。まずは自己資金で支出し、後から補助金が支払われる仕組みです。
- 他の国の補助金との重複申請はできません。
- 銀行振込による支払いが原則です。現金払いは原則認められません。
以上が、小規模事業者持続化補助金「災害支援枠」の概要です。被災された事業者の皆様にとって、この補助金が事業再建の一助となることを願っています。不明点がある場合は、お近くの商工会・商工会議所にご相談ください。一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。