令和5年12月初旬に経済産業省が公表した令和5年度補正予算に掲載されている「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」について、その詳細と可能性について深掘りします。
※追記:2024年2月28日時点 第4次公募が開始されました。申請締切は令和6年4月10日(正午)となっています。また、事前に公募申請の事前意志表示が必要でありその期限は令和6年4月1日(正午)までとなっています。
タイトスケジュールであるため注意が必要です。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
背景
国内の物価上昇に対応するために、継続的な賃上げの構造を作るため、労働者の移動やスキルアップの実現が必要となっています。
そのため、「人への投資」を積極的に行うことが重要だと国策で決定されました。
今後、国内経済、労働者の課題を解決するために5年間で1兆円がこの分野に投資される予定です。
国内経済の課題
- 物価上昇対策
- 継続的な賃上げ
国内の労働者の課題
- 社会学習・自己学習を行っていない
- 転職意向のある人が少ない
狙い
以下の3軸を実施する体制を整備することが狙いとなっています。
- 在職者が自らのキャリアについて民間の専門家に相談できる「キャリア相談対応」
- それを踏まえてリスキリング講座を受講させる「リスキリング提供」
- それらを踏まえた「転職支援」
これらを一体的に実施する体制を整備することが重要となります。
具体的な内容
概要
補助事業者(キャリア相談、転職支援などを行う企業等)が、在職者に対して補助事業を行います。
その際の対象経費が補助される制度です。
補助事業におけるキャリア相談対応の支援開始時(補助事業者への登録時及びキャリア相 談対応における初回面談時)に在職者である方に限定して支援を行うものであること。
ただし、雇用主の変更を伴う転職を目指していない方(リスキリング講座の受講 のみが目的の方等)は、支援の対象とできません。
対象者
◆<補助事業者>
- 国内に事業実施場所を有している法人、個人又は教育機関(地方公共団体を除く)。
- 本事業を的確に遂行する組織、人員等を有していること。
- 本事業の円滑な遂行に必要な経営基盤を有し、かつ、資金等について十分な管理能力を有していること。
- 経済産業省からの補助金交付等停止措置又は指名停止措置が講じられている者ではな いこと。
- 申請時において、過去5年間に職業安定法又は労働者派遣法の規定又はこれらの規定に基づく命令若しくは処分に違反していないこと。なお、これらの規定に違反して是正指導を受けたもののうち、交付決定時までに是正を完了しているものを除く。
- 在職者
◆在職者とは
・企業等と雇用契約を 締結している者を指します。
・具体的には正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員が該当します。
※経営者、個人事業主、フリーランス、家内労働者等の企業等と雇用契約を締結していない 者は対象となりません
補助対象となる事業
- キャリア相談対応・・・支援を受ける個人が、民間の専門家(キャリアコンサルタント等)に自らのキャリアについて相談し、これまでのキャリアの棚卸し、本支援を通じて目指す「キャリアゴール」の設定、スキルの棚卸し、リスキリング講座の検討等について相談を受けられる体制を構築した上で、個人に対する相談対応を行う取組を指します。
- リスキリング提供・・・支援を受ける個人に対するキャリア相談対応等を踏まえ、リスキリング講座を提供し、支援を受ける個人がリスキリング講座の受講を修了した場合に受講費用の負担を軽減 する取組を指します。
- 転職支援・・・支援を受ける個人に対するキャリア相談、リスキリング講座の受講等を踏まえて、転 職に向けた伴走支援や職業紹介を行う取組を指します。
- フォローアップ・・・支援を受けた個人の転職後のフォローアップとして、転職後1年間の転職先での継続 的な就業や転職に伴う賃金上昇の確認等を行う取組を指します。
対象経費
- 人件費
- 事業費(謝金・補助員人件費・広告費・システム構築運営費・その他経費)
- リスキリング経費
- 人件費・謝金・補助員人件費
補助額や補助率
支援開始人数1人当たり合計 10 万円に収まるように設定
ただし謝金に関して1時間当たり 7,500 円、支援開始 人数1人当たり、最大8時間を上限とする
- 広告費
集客目標人数1人当たり 2.5 万円に収まるように設定
- システム構築・ 運営費
集客目標人数に応じて、以下に収まるように設定
・99 人以内…100 万円
・100 人~499 人…200 万円
・500 人~999 人…500 万円
・1,000 人~4,999 人…1,000 万円
・5,000 人~9,999 人…3,000 万円
・10,000 人~19,999 人…5,000 万円
・20,000 人以上…7,000 万円
- リスキリング経費
リスキリング講座の提供価格の1/2相当額(1人当たり 40 万円を上限)
追加的な講座提供価格の1/5相当額 ※(講座受講修了人数1人当たり 16 万円を上限とする )
※講座受講修了後に転職が完了し、1年間継続就業した者のみ
事業の流れ
- 公募開始(事務局)
- 書類作成・電子申請(補助事業者)
- 事務局の審査(事務局)
- 採択発表(事務局)
- 採択者説明会を受講(補助事業者)
- 交付申請(補助事業者)
- 交付決定(事務局)
- 事業着手(補助事業者)
- 進捗報告(補助事業者)
- 事業完了報告(補助事業者)
- 経理証憑類提出 (補助事業者)
- 実績報告提出(補助事業者)
- 確定検査(事務局)
- 補助金振込み(事務局)
今後の展望
経済産業省の令和5年度補正予算には97億円が確保されています。
また、岸田政権よりリスキリングへの投資は5年間で1兆円を投じると発表されていることもあり、数年は継続的な支援が考えられます。
そもそもリスキリングとは?
リスキング(Reskilling)は、従業員が新しいスキルや能力を習得し、現在の職場や業界の変化、新しい分野への移行に適応するためのトレーニングや教育プロセスを指します。
リスキリングは、労働力の適応性を高め、テクノロジーの進化や市場の変化に対処するために非常に重要な役割を果たしています。
主に、以下の2つの意味に分けることができます。
- 現在持っているスキルをアップデートする
- 新たなスキルを身につける
アップデート型リスキリングは、現在持っているスキルを最新の技術やトレンドに合わせてアップデートするものです。例えば、プログラミングスキルを習得した人が、最新のフレームワークや言語を学ぶことで、スキルをアップデートすることができます。
新規獲得型リスキリングは、これまでに持っていなかったスキルを身につけるものです。例えば、営業職の人が、マーケティングやデータ分析のスキルを身につけることで、新たな職種に転職したり、業務の幅を広げたりすることができます。
具体例
リスキリングの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- プログラミングスキルのアップデート
- データ分析スキルの習得
- 英語力向上
- コミュニケーションスキルの向上
- マネジメントスキルの習得
リスキリングには、以下のメリット・デメリットがあります。
メリット・デメリット
メリット
- 従業員のスキルアップやキャリアアップにつながる
- 企業の競争力強化や生産性向上につながる
- 失業リスクの軽減につながる
デメリット
- 学習コストや時間の負担がかかる
- 学習に伴う不安やストレスが生じる可能性がある
今後の需要
今後も、テクノロジーの進化や少子高齢化による労働力不足などにより、リスキリングの需要は高まっていくと考えられます。
具体的には、以下の理由が挙げられます。
- テクノロジーの進化により、仕事のやり方や求められるスキルが大きく変化していく
- 少子高齢化により、労働力人口が減少し、新たな産業や職種が生まれてくる
そのため、企業は、従業員のスキルアップやキャリアアップを支援するために、リスキリングへの取り組みを強化していくことが求められています。
引用
経済産業省