~物流・製造業界に革新をもたらす技術~
倉庫業、製造業、小売業等での人手不足・作業効率の向上・在庫管理の最適化・安全性の確保などの課題は、経済の変化、特にグローバル化、消費者の需要の多様化、迅速な配送の要求などにより、今後さらに効率的なオペレーションが求められるようになってきます。無人搬送車は、これらの課題に対応し、生産性を高める一方で、労働コストを削減し、人材不足を補う重要な役割を果たします。
現在は技術革新により、より高度な自律性、柔軟性、コスト効率の良い無人搬送車が開発されており、これらの進化が業界のさらなる成長を促していくことでしょう。特に倉庫業、製造業、卸売業、小売業で、資材調達や加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫といった作業において無人搬送車を活用する機会が増加すると見られます。
本記事では、以上のような課題に対応するため、無人搬送車の導入に活用できる補助金制度を解説します。無人搬送車の活用により、企業は人手不足の解消、24時間稼働による生産性の向上、安全性の確保、作業ミスの減少、運用コストの削減などのメリットを享受できます。
無人搬送車・自律移動ロボットについて
- 無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)
工場などで荷物を自動かつ無人の状態でも目的地まで搬送してくれる台車型のロボットのことです。従来は人によってフォークリフト等の操縦が必要でしたが、無人搬送車の場合は自動で目的地まで行き、荷物をピックアップしてから指定の場所まで搬送することができます。これによって、工場内の輸送効率を大幅に向上させることに加え、大幅な省人化も行えるため工場の自動化に大きく貢献します。
無人搬送車はオペレーターがいないため、荷物など物品の搬送を行うことを目的とし、道路運送法で定められた道路で使用しないものとされています。一方で、近年ではAIやデータ分析の技術も進むことで、磁気テープを使用せずに走行ルートを自ら判断し、自律走行できるタイプが増加しつつあります。
- 自律移動ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)
作業環境を3Dで認識し、人間の介入なしに自律的にナビゲートする高度なロボットです。これらのロボットは、センサーやAI技術を活用して障害物を回避しながら、最適な経路で目的地まで移動します。AMRは、工場や倉庫などの環境で物品の搬送やピッキング作業に利用され、作業の効率化と安全性の向上に貢献します。
導入のメリットと活用事例
無人搬送車を導入することで作業を自動化することによるメリットと、活用できる場面を見ていきましょう。
1. 効率的な物流運搬
自動倉庫から出庫された商品を次の工程まで自動運搬するなど、様々な物品(ケース、カゴ車、棚)の搬送が可能になります。これにより、時間と人件費の節約、作業ミスの減少、24時間稼働による生産性の大幅な向上。フローの自動化により迅速な顧客対応につなげることができます。
2. 柔軟な作業指示
状況に応じた迅速な対応、短時間での作業指示の変更や更新による生産スケジュールの最適化が実現できます。例えばタブレット端末から運搬作業の指示や状況変更を容易に行い、作業効率を向上させることも可能です。繁忙期や緊急の注文に柔軟に対応することで、業務の優先度を調整できます。
3. 自動充電
搬送作業終了後、自動で充電場所へ戻る機能により、運用の手間を減らすことができます。運用の効率化とロボットのダウンタイムの削減、充電のための人的介入不要で全体の作業効率を向上させることが可能です。これにより、長時間の稼働が可能となり、人が作業を終えた後も自動で作業を続けることができ、生産性の大幅な向上を実現。
4. 人追従機能
人に追従して複数台の台車を効率良く運搬、人手を要する作業の効率化を図ることができます。単純作業の自動化による従業員の負担軽減、複数の荷物を同時に効率的に運搬可能になります。これにより従業員がピッキングした商品をAGVが自動的に搬送し、労働力をより価値の高い作業に振り向けることができるようになります。
拡大する無人搬送車の市場規模
AGV(無人搬送車)とAMR(自律移動ロボット)の市場は、2022年の売上が約50億米ドルであり、2028年までには約200億米ドルに成長すると予測されています。AGVおよびAMRは、物流業界および製造業界を中心に広く採用されており、コストの削減や効率化に大きく貢献しています。また、新たな技術の進歩により、物流や製造業以外の分野での新たな応用も見込まれています (GII Japan)。
これらの情報は、無人搬送車の市場規模および成長予測に関する詳細な分析を提供し、今後数年間でのAGVとAMRの重要性と市場の潜在的成長を示しています。両市場ともに、技術革新と産業のニーズにより、今後も成長が見込まれることが分かります。
市場調査など総合マーケティングビジネスを手掛ける富士経済も、2025年にAGV(無人搬送車)など物流・搬送用ロボットの世界市場規模は2兆400億円へと飛躍的に拡大すると見通しており、日本国内においても今後市場は拡大していく見込みとなっています。
- 日本国内で無人搬送車の市場が拡大する背景
- 人手不足の解消: 日本は特に製造業や物流業界で深刻な人手不足に直面しています。無人搬送車や自律移動ロボットの導入により、企業は人手が足りない問題を解消し、効率的な作業フローを確立できます。
- 高齢化社会への対応: 日本の高齢化が進む中で、高齢者の就労支援や介護の現場でもAGVやAMRの活用が期待されています。これらの技術により、高齢者の負担を軽減し、より安全で快適な環境を提供できるようになります。
- 技術革新: IoT、AI、ロボティクスの進化により、より高度で柔軟な無人搬送システムの開発が可能になりました。これらの技術は、無人搬送車や自律移動ロボットをより賢く、より効率的にし、多様な用途への適応を可能にしています。
- 産業の効率化とコスト削減: AGVやAMRは、作業の自動化によって生産性を向上させ、長期的には運用コストを削減します。これにより、企業は競争力を高め、市場での優位性を保つことができます。
- 災害対応: 日本は自然災害が多い国です。AGVやAMRは災害時の物資輸送や救助活動にも活用されることが期待され、社会インフラの強化に貢献する可能性があります。
- Eコマースの成長: オンラインショッピングの需要の増加に伴い、物流センター内での効率的な商品のピッキングや梱包作業にAGVやAMRが利用されています。迅速な配送を実現するために、これらの技術の導入が進んでいます。
見通し
これらの背景から、日本国内での無人搬送車や自律移動ロボットの市場は、製造業や物流、介護、災害対応など、多岐にわたる分野での需要増加により、今後も拡大していくことが予測されます。技術革新の進展とともに、これらのシステムはさらに高度化し、新たな応用領域が拓かれるでしょう。
2024年新設!無人搬送車の導入に活用できる補助金
2024年に入り無人搬送車を対象経費に含めることができる補助金が新たに制定されました。この制度の活用により、これまで以上の販路拡大が期待できるようになりました。
中小企業省力化投資補助金の概要
中小企業省力化投資補助金(中小企業省力化投資補助事業)という名称のこの補助金は人手不足に悩む事業者を対象に制定されています。
無人搬送車においては倉庫業、製造業、卸売業、小売業の事業者を対象に購入費用と導入経費(設置作業、運搬費、動作確認費用、マスタ設定等の導入設定費用など)が補助対象経費として認められています。補助額と補助率は以下の表のとおりで、販売単価をそのままで購入費用を約50%補助される内容となっています。よって作業の自動化への投資を検討されている事業者様には大きなビジネスチャンスとなります。
補助金活用のメリット
- 導入費用の負担軽減
- 最新機種の導入促進
- 導入後のランニングコスト削減
- 競争力強化
従業員数 | 補助率 | 補助上限額 (事業者が大幅な賃上げを行う場合) |
5人以下 | 1/2以下 | 200万円 (300万円) |
6~20人以下 | 500万円以下 (750万円) | |
21人以上 | 1,000万円以下 (1,500万円) |
中小企業省力化投資補助金の想定事例
無人搬送機における想定事例やその効果については中小企業省力化投資補助金の事務局公式ページに資料が公開されています。以下はその内容になります。
※イメージ画像は当社の画像に置き換えています。
資料名:製品カテゴリ
中小企業省力化投資補助金の活用で、人材不足や労働コストへ対応
2024年の補助金制度導入により、無人搬送車のの導入が比較的小規模な事業者でも現実的な選択肢となりました。 これまでは導入コストの高さや費用対効果の検討から、大手チェーンやオフィスビルなど限られた場所でしか導入されていませんでしたが、補助金によって導入費用が最大50%軽減されるため、小規模事業者でも導入しやすくなりました。
倉庫業、製造業、卸売業、小売業の事業者様が中小企業省力化投資補助金を活用するにはこの補助金のルールを理解した上で正しい手順で活用を進めていきます。以下にその概要と詳細の記載と関連記事情報を添付します。
IT導入補助金をご存じの販売店であれば、IT導入補助金の流れを類似しているとお考えください。
中小企業省力化投資補助金を活用する方法
販売店(メーカー含む)が中小企業省力化投資補助金を活用するにはこの補助金のルールを理解した上で正しい手順で活用を進めていきます。以下にその概要と詳細の記載と関連記事情報を添付します。
IT導入補助金をご存じの販売店であれば、IT導入補助金の流れを類似しているとお考えください。
中小企業省力化投資補助金の流れ
中小企業省力化投資補助金の流れは以下の通りです。
販売店は指定された工業会に対して製品審査申請を行う。
(必要書類など詳細情報は下記関連記事2をご参考ください。)
指定された工業会 | 一般社団法人日本物流システム機器協会 |
工業会mail | p-registration@jimh.or.jp |
工業会電話番号 | 03-6222-2001 |
申請された書類は工業会→補助金事務局→有識者委員会→中小企業庁という順に承認がされていきます。その後、工業会から証明書が発行されて正式に製造事業者としての登録申請が可能になります。
製造事業者として登録が完了した後は、補助金事務局が用意するカタログに製品を登録する。
(登録情報など詳細情報は下記関連記事2をご参考ください。)
カタログ登録された製品が正式に公開される。
カタログを見た購入希望の事業者が販売店に問い合わせを行い、事業者と販売店が共同で補助金を申請する。
関連記事2
参考資料
中小企業省力化投資補助金事務局公式ホームページ
補助金の活用支援
以上から補助金の活用は無人搬送車導入において大きなチャンスとなっています。
補助金全般の特性として初めに申請された事業者が有利という特性があります。補助金事務局側も新しい補助金の基準となる事例を見つけたい、補助金の予算が豊富という要素があるからです。
今回、新たに制定された中小企業省力化投資補助金は無人搬送車がピンポイントに対象経費に含まれています。中小企業省力化投資補助金では今後、無人搬送車のような製品カテゴリーが300登録され、各カテゴリーごとに100種類の製品が登録される見込みとなっています。その製品カテゴリーの中でも無人搬送車においては初めの9カテゴリーに選定されていることを踏まえると日本経済にとって重要な製品である国からも認められているということです。
当社では販売店様の支援を開始しています。
類似スキームのIT導入補助金においても書類作成の実績を数百件あり、事業再構築補助金、ものづくり補助金といった難易度が高い補助金を年間170件以上支援している実績もあります。
そのため、補助金を活用したい事業者様、販売店様の双方のアプローチが可能です。
さらに中小企業省力化投資補助金においては関連グループ企業を通じて当社でも製品登録を進めているところです。
この記事をご参照された事業者様で中小企業省力化投資補助金を活用して無人搬送車の導入を検討したいというご要望がございましたら当社までお声掛けください。
お問い合わせは以下のURL全てから可能です。