【2024年度版】中小企業向け脱炭素化設備投資の助成金完全ガイド – 最大3,000万円の補助で実現するCO2削減対策

目次

1. 助成金制度の概要

制度の目的と背景

近年、環境意識の高まりとともに、大企業を中心としてサプライチェーン全体での脱炭素化への取り組みが加速しています。特に取引先に対するCO2排出量の削減要求が強まっており、中小企業にとって脱炭素化対策は、取引継続や新規取引開始における重要な要件となってきています。

このような背景を受けて、東京都では中小企業の脱炭素化を支援するため、「中小企業のサプライチェーンにおける脱炭素化促進支援事業」を実施しています。本制度は、都内の中小企業グループによる計画的なCO2排出削減の取り組みを、ハンズオン支援と設備投資の助成金という両面からサポートする画期的な支援制度です。

支援内容のポイント

本助成金制度の主な特徴は以下の3点です:

  1. 手厚い補助率と高額な補助限度額
  • 補助率:対象経費の3分の2以内
  • 補助限度額:3,000万円
  • 支払方法:完了払い(事業完了後の一括払い)
  1. 包括的な支援メニュー
  • CO2可視化システムの導入支援
  • 脱炭素化に向けた生産設備の導入・更新
  • 省エネ設備等の導入・更新
  • 展示会出展費用のサポート
  1. 専門家によるハンズオン支援
  • CO2排出量削減計画の策定サポート
  • 脱炭素推進人材の育成支援
  • 実行段階での継続的なアドバイス

申請から交付までのスケジュール

申請期間:令和6年(2024年)8月1日から令和7年(2025年)1月31日17時まで ※ただし、予算上限に達し次第、申請受付を終了

主要なスケジュール:

  1. ハンズオン支援の実施(必須)
  2. CO2排出量削減計画の策定
  3. 助成金申請書類の提出
  4. 審査・交付決定
  5. 事業実施
  6. 完了報告・完了検査
  7. 助成金の交付

2. 申請資格と対象要件

対象となる中小企業の条件

以下の条件を満たす中小企業が申請対象となります:

  1. 業種別の資本金・従業員数の基準
  • 製造業・建設業・運輸業:資本金3億円以下または従業員300人以下
  • 卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下
  • サービス業:資本金5,000万円以下または従業員100人以下
  • 小売業:資本金5,000万円以下または従業員50人以下
  1. 大企業との資本関係 以下の条件に該当しない企業であること:
  • 発行済株式の2分の1以上を同一の大企業が所有
  • 発行済株式の3分の2以上を複数の大企業が所有
  • 大企業の役員または職員が役員総数の半数以上を占める

地理的要件と事業実態

申請企業は以下の条件を満たす必要があります:

  1. 都内での事業実態
  • 基準日(令和6年4月1日)時点で東京都内に登記簿上の本店または支店があること
  • 東京都内事業所で継続的に2年以上事業を実施していること
  • 本助成事業の成果を都内で継続的に活用する計画があること
  1. 設備設置場所の要件 設備の設置は以下のエリア内に限定:
  • 東京都
  • 神奈川県
  • 埼玉県
  • 千葉県
  • 群馬県
  • 栃木県
  • 茨城県
  • 山梨県

申請における注意点

  1. グループ申請の要件
  • 特定の製品等で供給関係にある複数の中小企業でグループを構成
  • 同一企業が複数のグループに所属することは不可
  1. 事業継続性の確認
  • 民事再生法等の手続き中でないこと
  • 都税の滞納がないこと
  • 過去の助成事業での不正がないこと
  1. 必要な許認可等の取得
  • 環境関連法令に基づく必要な許認可を取得していること
  • 事業実施に必要な法令等を遵守していること

3. 助成対象となる経費と補助率

CO2可視化システム関連経費

CO2排出量の可視化は本助成金における重要な要件です。以下の経費が対象となります:

  1. 初期導入経費
  • システム環境設定費用
  • マスターデータ設定費用
  • システムカスタマイズ費用
  • 開発委託料
  1. 運用関連経費
  • クラウドサービス利用料
  • システム保守料
  • 操作方法サポート費用
  • データ連携に関する費用

※重要ポイント:

  • 助成事業完了時までにCO2可視化システムを導入していることが必須条件
  • 既存システムがある場合でも申請は可能
  • 使用許諾契約等による利用も認められる

脱炭素化設備の導入・更新経費

生産工程におけるCO2排出削減に寄与する設備が対象となります:

  1. 生産設備の導入・更新
  • 省エネ型の最新型生産設備
  • CO2排出量低減につながる新規製造ライン
  • 生産方式の見直しに伴う加工機器
  1. 計測・モニタリング機器
  • デマンド監視装置
  • 電力量センサー
  • 流量計
  • 温湿度計
  • 熱量計

省エネ設備の導入経費

建物や施設全体の省エネルギー化に関わる設備が対象です:

  1. 照明・空調関連
  • LED照明設備
  • 高効率空調設備
  • 高効率ボイラー
  • 高効率変圧器
  1. 建物付帯設備
  • 断熱窓の設置
  • 遮熱設備の導入
  • 人感センサーの設置
  • エネルギーマネジメントシステム
  1. 蓄電・省エネ機器
  • 蓄電池システム
  • 廃熱回収装置
  • コンプレッサー
  • インバーター装置

展示会出展費用

脱炭素化の取り組みを発信するための展示会出展費用が対象となります:

  1. 出展料
  • 展示会小間料
  • ブース使用料
  • 電気・水道等の付帯設備利用料
  1. 展示関連経費
  • ブース装飾費
  • 展示物の制作費
  • 通訳委託費

※展示会出展における注意点:

  • リアル展示会またはリアル+オンラインのハイブリッド形式が対象
  • オンラインのみの展示会は対象外
  • 販売を主目的とした展示会は対象外
  • 会期は1ヶ月以内であること

補助対象外となる主な経費

以下の経費は助成対象外となりますのでご注意ください:

  1. 一般的な除外項目
  • 消費税
  • 振込手数料
  • 通信費、光熱費等の間接経費
  • 汎用性の高い機器(パソコン、デジタルカメラ等)
  1. 設備関連の除外項目
  • 中古品の購入費用
  • リース・レンタルによる調達費用
  • 自社以外に設置する設備の費用
  1. その他の除外項目
  • 事務的経費(会議費、消耗品等)
  • 展示会等のキャンセル料
  • 資料収集業務費
  • 調査業務費

経費計上における重要事項

  1. 見積書の取得
  • 1件100万円(税抜)以上の経費は2社以上の見積書が必要
  • 見積書には具体的な仕様や数量の明記が必要
  1. 支払方法
  • 原則として金融機関による振込払い
  • 手形や小切手による支払いは不可
  • 相殺取引による支払いは認められない
  1. 経費の計上期間
  • 交付決定日から令和8年3月31日までに
    • 契約
    • 導入・設置
    • 支払い のすべてを完了する必要があります

4. 申請から交付までの具体的な流れ

事前準備と必要書類

  1. 申請前の準備事項
  • ハンズオン支援の受講完了
  • CO2排出量削減計画の策定
  • jGrantsでの申請に必要なGビズIDプライムアカウントの取得 ※アカウント発行には約1週間程度必要
  1. 必要書類一覧

法人の場合:

  • 申請書一式(申請前確認書含む)
  • CO2排出量削減計画支援終了証明書
  • 見積書の写し(100万円以上は2社以上)
  • 確定申告書の写し(直近2期分)
    • 別表一~十六
    • 決算報告書
    • 勘定科目内訳明細書
    • 法人事業概況説明書
    • 電子申告の受付通知
  • 登記簿謄本(発行後3ヶ月以内)
  • 納税証明書(法人事業税・法人都民税)
  • 会社案内または社歴書

個人事業主の場合:

  • 申請書一式(申請前確認書含む)
  • CO2排出量削減計画支援終了証明書
  • 見積書の写し(100万円以上は2社以上)
  • 確定申告書の写し(直近2期分)
  • 開業届の写し
  • 所得税納税証明書
  • 住民税納税証明書
  • 代表者の経歴書

申請手続きの詳細

  1. 申請受付期間
  • 開始:令和6年8月1日
  • 締切:令和7年1月31日17時00分 ※予算上限到達時は期間内でも受付終了
  1. 申請方法
  • jGrantsによる電子申請のみ
  • 郵送・持込による申請は不可
  • 申請書類の提出後の修正・差替えは原則不可
  1. 申請時の注意事項
  • 連絡先は申請者の役員または社員に限定
  • 業務委託先や顧問等は連絡先として不可
  • 提出書類は必ずコピーを保管
  • 原本は申請者にて保管が必要

審査のポイント

  1. 資格審査
  • 申請要件との適合性確認
  • 欠格事由の有無確認
  • 必要書類の完備確認
  1. 経理審査
  • 財政状態の確認
  • 経営成績の評価
  • 資金計画の妥当性確認
  • 事業予算の適正性評価
  1. 価格審査
  • 市場価格との比較
  • 経費の妥当性確認
  • 設備仕様の適切性確認
  1. 面接審査
  • 事業趣旨との合致性
  • 実現可能性の評価
  • 計画の妥当性確認 ※公社が指定する日時での実施(日程変更不可)

交付決定後の注意事項

  1. 事務手続き説明会への参加
  • 助成事業遂行の注意点説明
  • 事務処理手続きの確認
  • 必要書類の説明
  1. 事業実施における留意点
  • 交付決定後の契約・発注
  • 助成対象期間内での事業完了
  • 支出関係書類の適切な保管
  • 各種報告義務の遵守
  1. 完了報告と検査
  • 事業終了後15日以内の報告書提出
  • 支払確認に必要な帳票類の準備
  • 現地での完了検査対応
    • 購入物品の現物確認
    • 支払関係書類の原本照合
    • CO2可視化システムの導入確認
  1. 助成金の受給
  • 完了検査後の交付額確定
  • 請求書と印鑑証明書の提出
  • 指定口座への振込受領

5. 申請時の注意点とよくある質問

申請における一般的な注意事項

  1. 申請前の重要確認事項
  • 交付決定は支払保証ではないことの理解
  • 助成金は事業完了後の後払いであることの確認
  • 交付予定額は上限額であり、実際の支払額は検査後に確定
  1. 予算計画での注意点
  • 自己資金の準備状況の確認
  • 後払いに対応できる資金繰りの確保
  • 経費支出時期の適切な計画立案
  1. 事業期間中の遵守事項
  • 関係書類の適切な保管(事業完了後5年間)
  • 財産の適切な管理と処分制限の遵守
  • 各種報告義務の期限内履行

書類作成のポイント

  1. 申請書作成時の注意点
  • 記入漏れ・押印漏れの確認
  • 数値の整合性チェック
  • 添付書類の完備確認
  1. 見積書取得のポイント
  • 「一式」表記は不可、詳細な内訳が必要
  • 100万円以上は2社以上の見積もり
  • 仕様・数量・金額の明確な記載
  1. 計画書作成のコツ
  • 具体的な数値目標の設定
  • 実現可能な実施スケジュールの立案
  • CO2削減効果の定量的な説明

よくある質問(FAQ)

  1. 助成金申請に関する質問

Q: 公社の他の助成金と併用できますか? A: 同一機械設備(同一型番、同一製造番号)での併願申請はできません。どちらか一方を選択する必要があります。

Q: 他機関の助成金との併用は可能ですか? A: 他機関の助成金との併願は可能ですが、同一機械設備での二重受給はできません。両方採択された場合は、いずれかを選択していただきます。

  1. 対象企業・設備に関する質問

Q: 医療法人は申請できますか? A: 医療法人は中小企業基本法上の中小企業には該当しないため、申請はできません。

Q: 使用貸借契約の物件に機械設備を設置できますか? A: 設置できません。自社所有物件または賃貸借契約が結ばれている物件で、自社の管理下にある場所に設置する必要があります。

  1. 経費に関する質問

Q: 交付決定前に支払った経費は対象になりますか? A: 助成対象期間内(交付決定日から令和8年3月31日まで)に契約、取得、支払いをすべて完了した経費のみが対象となります。

Q: 既存設備の取り扱いについて教えてください。 A: 置き換える既存設備は、原則として撤去または稼働不能な状態にすることが望ましいです。ただし、機能や能力の代替が一部に留まる場合等、既存設備の撤去が不合理と認められる場合は、継続使用が認められる可能性があります。

  1. 事業実施に関する質問

Q: 設備の設置場所を途中で変更できますか? A: 原則として、申請時に記載した設置場所からの変更はできません。実現可能性を十分に考慮の上、申請してください。

Q: 一時的に設備を設置場所から移動することは可能ですか? A: 事業遂行のために一時的な移動は可能ですが、申請書に記載した設置場所に保管する必要があります。

  1. 事後管理に関する質問

Q: 助成事業完了後の注意点を教えてください。 A: 以下の点に注意が必要です:

  • 取得財産の管理台帳整備
  • 助成事業完了後5年間の財産処分制限
  • 定期的な活用状況報告の提出
  • 関係書類の保存(5年間)

申請者へのアドバイス

  1. 準備段階でのポイント
  • 早めの情報収集と準備開始
  • 専門家への相談活用
  • 社内での実施体制の確立
  1. 申請段階での注意点
  • 書類の完全性確認
  • 期限に余裕を持った提出
  • 連絡体制の整備
  1. 実施段階での重要事項
  • 計画的な事業実施
  • 適切な記録・証憑の保管
  • 報告義務の確実な履行
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