令和5年度補正予算案において閣議決定された「中小企業省力化投資補助金(カタログ型)」について現状の情報を整理して説明します。公募は2024年4月より開始される見込みです。ご興味がある事業者は早期に準備を進めていただくことを推奨しています。
2024年3月30日時点
中小企業省力化投資補助金に関連する記事は下記の通り更新しています。
制度概要
2023年度補正予算の一環として、日本政府は中小企業の生産性向上を後押しするための新たな施策を公表しました。この施策は「省力化投資補助金(カタログ型):(中小企業省力化投資補助事業)」と名付けられ、中小企業の省力化と生産性の向上を目的としています。
この制度は、中小企業(個人事業主・中堅企業含む)の省力化投資を支援するために設けられたもので、IoTやロボットなどの技術を活用し、人手不足の解消や生産性向上を目指すことを目的としています。
年々大きくなっている課題に合致した制度が2024年度に新設されます。
事業投資の対象となる設備はこれまでと異なり人手不足解消に即効性がある汎用製品をカタログの中から選定して申請を行います。そのため、従来のように事業者の任意の設備を選定できない点に注意が必要です。
IT導入補助金のように事前に登録された製品を自社の人手不足解消に効果が見込まれる製品として選定して審査を行う流れになりそうです。
制度設立の背景
事業再構築補助金を再編した制度として設立されました。事業再構築補助金の予算から4,000億円がこの補助金へ再編されることを考えると大型の補助金であることが分かります。
対象経費
【補助対象】
IoT、ロボットなどの人手不足解消に即効性がある汎用製品。ただし、あらかじめ用意された「カタログ」の中から事業者が選択する必要があり、任意で設備やシステムを選択できない点に注意が必要です。
カタログの詳細は記事公開日において公開はされていません。
内閣府の資料には飲食店を例として自動清掃機ロボットと自動配膳ロボットが掲載されている。
※2023年3月時点で以下の製品がカテゴリーに登録されています。(製品名:対象業界)
- 券売機:飲食サービス業
- 自動精算機:飲食サービス業、小売業
- 自動チェックイン機:宿泊業
- スチームコンベクションオーブン:宿泊業、飲食サービス業、小売業
- 無人搬送機(AGV・AMR):製造業、倉庫業、卸売業、小売業
- 検品・仕分けシステム:製造業、倉庫業、卸売業、小売業
- 自動倉庫:製造業、倉庫業、卸売業、小売業
- 清掃ロボット:飲食サービス業、宿泊業
- 配膳ロボット:飲食サービス業、宿泊業
事業者に求められる要件
・付加価値額の増加
・生産性の増加
・賃金引上げ
(正式にはまだ公開されていません)
中小企業省力化投資補助金(カタログ型)の予算規模
中小企業等事業再構築基金を含めて5,000億円(事業再構築基金より4,000億円と補正予算で1,000億円の合計)
事業再構築補助金の再編により中小企業省力化補助事業に基金が流れる見込みです。
ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金、事業承継引継ぎ補助金を合わせた予算が2,000億円なので、中小企業省力化投資補助金(カタログ型)の予算規模が大きいことが分かります。
補助率
投資額の1/2が補助されます。
例:補助対象経費1,500万円の場合 1,500万円(投資額)×1/2(補助率)=750万円(補助額)
※注意:消費税は補助対象外になります。
補助上限額
従業員数により異なります。
・従業員数5名以下:200万円
・従業員数6~20名:500万円
・従業員数21名以上:1000万円
賃上げ要件を達成すると補助上限額が引きあがります。
賃金げ要件を達成したときの補助上限額↓
・従業員数5人以下:300万円
・従業員数6名~20名:750万円
・従業員数21名以上:1,500万円
従業員数 | 補助率 | 補助上限額 (大幅な賃上げを行う場合) |
5人以下 | 1/2 | 200万円 (300万円以下) |
6~20人以下 | 1/2 | 500万円以下 (750万円以下) |
21人以上 | 1/2 | 1,000万円以下 (1,500万円以下) |
事業再構築補助金と比べると事業者あたりの補助上限額が低いことが分かります。
一方で予算額が大きいことを踏まえると国内の多くの中小企業者等が申請することを見越していると推測できます。
大幅な賃上げの要件
- 事業所内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げる
- 給与支給総額を年率平均6%以上増加させる
- 賃上げ計画を従業員に表明いること
補助金公募開始の時期と公募回数
補助金の公募スケジュールと将来の展望
補助金の公募開始時期
今後のスケジュールに関しては、2024年4月より公募が開始される見込みです。また、補助対象となるカタログに掲載される機器やサービスの選定後、中小企業や小規模事業者からの申請を常時受け付ける体制が整えられる予定です。
2024年2月時点での最新情報
2024年2月現在、省力化投資補助金の具体的な公募スケジュールはまだ公表されていません。しかし、政府はこれまでの発表で、2026年9月末までに15回程度の公募を行い、計12万件程度の採択を予定しているとしています。
つまり、2ヵ月に1回の公募で1回あたり8,000件の採択件数が予定されているということです。この情報からかなり高い採択率が想定できます。
情報元:「中小企業省力化投資補助金(カタログ型)」に係る事務局の公募要領>P17
20240126_kobo01_01.pdf (保護) (smrj.go.jp)
業種別の活用事例
- 飲食業: AI音声機能を搭載した自動配膳ロボットの導入
- 建設業: 点検や測量用のドローンの導入
- 農業: 自動走行トラクターや無人運転コンバインの導入
- 倉庫業: 自動搬送ロボットの導入
特定の業種によるものではなく、様々な業種に活用できそうです。特に人手不足が深刻な業界(自動車整備業、運用業、介護業など)の活用は期待できそうです。
まとめ
中小企業省力化投資補助金(カタログ型)は、中小企業の効率化と生産性向上を目指すものです。
この制度では、IoTやロボットなどの先進的な設備導入を支援し、補助率は従業員数に応じて変わります。
予算は5000億円と大規模で国策としても注力したい制度だと考えることができます。
また、補助金は早期申請が採択には有利になることが多いので第1次公募で申請を実施することを推奨しています。
最新の情報は公式サイトから確認、もしくは当社からのリリースをご参考にしていただけると助かります。